労働者の仕事というとジョブ、ワークとかいろんな言い方がある。実は仕事の仕方はその社会、文化によって全く異なり、このことを押さえることが重要である。違いは何処からくるのか。ざっくり言うと、社会構造の違いである。欧米(特に米)の特長を並べてみると、まず利益社会、競争社会、早いもの勝ち、優勝劣敗社会で個人の利益追及は善とされる。競争によって効率の良いもの、サービスが供給され社会が進歩すると考える。経営者は生産性の高い仕事(ワーク)をして高額の報酬を受け取り、労働者は作業(ジョブ)を行い、貯蓄のできない報酬を受け取る。ノーベル賞経済学者が糾弾する「1%の成功者が富の99%を獲得する」状況である。純然たる経済組織である企業の目的は経営者、株主の利益追及であり、労働者はコストであって、少ないほど良い。ジョブは時間や数字や金額に換算され、ぶつ切りのものになる。労働者は報酬のためにジョブを提供するが、苦役であり、心の満足をもたらすものではない。日本はどうか。日本は平等を目指す共同体社会で競争よりも和による社会の安定を価値と考える。企業は社会的組織であり、社会への貢献、長期的雇用と社員の成長を目的と考える。日本の労働者はワークもすればジョブも行う。仕事はブツ切りではなく、技能、技術の積み重ねによって品質向上、改良、発明が生み出される。彼等にとって仕事はいわば人生(誇り、生きがい)というようなものになる。この様な仕事の仕方を支援する環境として日本的経営を行う企業は終身雇用、年功序列、報酬の平等主義、企業帰属主義、企業内組合の仕組をとっている。社会構造の違いの底流は宗教(神道、佛教、儒教対キリスト教)経済制度(人本主義対資本主義)、世界観(自然主義対科学主義)からきている。両文化はいわば真逆の関係であり、処方箋を間違わないようにしたい。西欧型効率優先労働も日本型品質優先労働も優劣を論じるのは的外れである。それぞれの国が歴史のなかで選び取ってきたものである。